獣医師が使用する薬品について 2

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以前獣医師が使用する薬品についてを掲載致しましたが、今回はその2でゾニサミドという抗てんかん薬についてです。

「日本で開発された医薬品で動物用医薬品としては販売されていないもの」
であった薬品ゾニサミドが、現在では、
「日本で開発された医薬品で動物用医薬品としても販売されているもの」
という薬品になっています。


抗てんかん薬

白石動物病院では今までに大変多くのてんかん発作に苦しむ動物達に対し抗てんかん薬による発作のコントロールを行ってきました。
使用してきた薬剤は多種にわたります。
ジアゼパム、フェノバルビタール、プリミドン、フェニトイン、バルプロ酸、ゾニサミド、臭化カリウムなどそれぞれを多数の発作に悩む動物に使用してきました。
バルプロ酸は効果をあまり感じない、成書にも記載されていることですがジアゼパムは長期のコントロールには向かない、などなどを経験し現在は自分なりに最も良い効果を高確率に得る事が出来る形ができました。 

 

抗てんかん薬ゾニサミドについて

この薬品は日本で開発され1989年(平成元年)に日本国内のみで販売が開始されました。
海外で販売されるようになったのは2000年以降で、現在ではアメリカ、アジア、ヨーロッパと広がってきています。
さらに2014年ようやく動物用としても販売が開始されています。

前回にも記載しましたが、日本で開発され海外では販売さていない製品は、犬猫に対する薬用量の記載はありません。
しかしながら人の医薬品として日本でのみ販売されている時代にも、日本国内の獣医師間で犬への薬用量は知られてはいましたし、実際使用もされていました。
ところが当時の薬価は高く、現実問題として長期投薬が必要となるため、小型犬でなければ飼い主への経済的負担が大きく継続困難でした。
当院でも、当時小型犬のみですが相当数使用しました。
現在は主として使用する薬剤ではありませんが、当院で主として使用している薬剤では効果が得にくい場合のみに使用を検討します。

 

ゾニサミドは副作用の尿路結石に注意

人間の場合副作用として尿路結石症がよく知られており、腎結石さらに尿管結石についていくつもの報告がされています。
犬や猫でどの程度起こるのかはわかりませんが、起こった場合には人より非常に深刻な状況になることが想像されます。
人では温存療法が実施できます。
その方法は、たっぷり水を飲み、縄跳びや階段昇降などの運動をし、その際の重力を利用し膀胱に落下させることができますし、衝撃波で粉砕することも出来ます。
人では尿管結石の治療に外科療法はほとんど選択されない状況になっています。
しかし犬猫では人の温存療法と同じ方法は適用出来ません。
というのも、水をたっぷり自主的に飲んでくれません。
人の尿管は重力方向に走行していますが、4本足の動物の尿管の向きは重力方向と直交しています。
さらに衝撃波で粉砕する特殊な医療機器は利用できません。
従って尿管につまり腎臓に負担(水腎症など)が来るようであれば外科的に摘出する必要があるのです。

犬や猫にゾニサミドを投与している際に、腎結石や尿管結石の診断がなされたとしても、発作に対する投薬は投薬、結石症は結石症と別物で無関係と考え報告されていない可能性があります。
それ故実際にはすでにおこっているかも知れないのです。
獣医師も飼い主もゾニサミドには尿路結石という副作用が起こり得る事を知っておく必要があります。

 

 

 

 

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