獣医師が使用する薬品について

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獣医師が使用する色々な薬品について

犬・猫に使用する注射薬や内服薬は、犬猫のために認可された製品が多くを占めるようになってきました。
しかしながら犬猫用として販売されていないために、医薬品を使わなくてはならない薬品もまだまだ相当多くの種類が存在しています。
獣医師が普段使用する薬品は、多くの場合海外で出版された薬用量マニュアルを使い投薬量の計算をして使用することが多いです。

日本国内で開発された医薬品で、海外で使用されていないものはマニュアルに掲載されていないため、これらの薬品は自然と使用されなくなります。

日本で開発された医薬品で動物用医薬品としても販売されているもの
日本で開発された医薬品で動物用医薬品としては販売されていないもの
海外で開発された医薬品で日本で動物用医薬品としても販売されているもの
海外で開発された医薬品で日本では動物用医薬品としては販売されていないもの

など様々なパターンの薬品が存在しておりますがその中の二つの薬品をここで紹介致します。

 

ミヤリサン(ミヤBM

ミヤリサンは日本で開発された医薬品で、動物用の製品も存在しますが、海外で使用されていないために、日本の獣医師が使用する薬用量マニュアル、内科学や消化器学の本(全て海外の成書で訳本になります)には掲載されていないため、犬猫に対し使用している獣医師はほとんどいないのが現状です。
ミヤリサンは狭義のプロバイオティクスに分類され、動物に対しても非常に効果のある素晴らしい薬品です。
当院では通常の消化器疾患に対する使用法の他、肝性脳症の動物に対し悪玉菌を減らすことによる血中アンモニア濃度の低減に以前より役立てております。

以下に、ミヤリサン(ミヤBM)インタビューフォームより抜粋して掲載致します。

 

作用機序 

本剤中の酪酸菌(宮入菌)は、腸管内で発芽、増殖することにより、酪酸等の短鎖脂肪酸や各種代謝産物を産生し、有害菌や病原性細菌の抑制または有用菌を保持し、腸内細菌叢のバランスを改善させて種々の腸の諸症状、例えば急性、慢性腸炎や便秘さらには抗生物質や化学療法剤投与による下痢症を改善する。 また、酪酸菌(宮入菌)の産生する酪酸や酢酸などの短鎖脂肪酸は、消化管粘膜上皮細胞の増殖促進作用、水・ナトリウムの吸収調節作用を示す。さらに、酪酸は腸管内における抗炎症作用や大腸上皮細胞の重要なエネルギー源として利用されやすいなど、消化管内でさまざまな生理作用を発揮することが知られている。 

 

薬効を裏付ける試験成績 

[動物実験・in vitro 実験] 

  • 1)  人胃液中において、酪酸菌(宮入菌)と他の乳酸菌類との胃酸抵抗性を比較したところ、pH3.5 以下において、乳酸菌類はほぼ完全に死滅するのに対して、酪酸菌(宮入菌)はほとんど影響を受けなかった(in vitro)。
  • 2)  混合培養において、酪酸菌(宮入菌)は、コレラ菌、赤痢菌、腸炎ビブリオ、サルモネラ属菌、腸管病原性大腸菌、腸管毒素原性大腸菌、腸管出血性大腸菌など、各種腸管病原体の発育を抑制した(in vitro)。
  • 3)  酪酸菌(宮入菌)の培養濾液を添加した液体培地では、添加していない培地と比較して、ビフィズス菌の発育が促進された(in vitro)。
  • 4)  ラット DSS 大腸炎モデルに対して、本剤を併用すると腸内の酪酸などの短鎖脂肪酸の増加とともに、PCNA 免疫陽性細胞が増加し、Ulcer Index と炎症パラメータである MPO(ミエロパーオキシダーゼ)活性が有意に低下した
  • 5)  無菌マウスにおいて、酪酸菌(宮入菌)を投与することにより、腸管出血性大腸菌 O157: H7 の増殖性、毒素産生性および致死率が有意に抑制された
  • 6)  ハムスターに抗生物質を投与することによって作成した Clostridium difficile による腸炎発症動物モデルにおいて、バンコマイシンは下痢の発症と致死率は抑えるものの、 投与を中止すると再発する割合が高かったが、酪酸菌(宮入菌)の投与は、下痢の発症や致死率を著明に低下させ、さらに酪酸菌(宮入菌)の投与中止によっても再発することはなかった。
  • 7)  無菌マウスを用いた動物実験にて、Clostridium difficile のマウス腸管内における増殖性と毒素産生性は、酪酸菌(宮入菌)により顕著に抑制された。また、Clostridium difficile を無菌マウスに単独感染させた場合には、2 日目までに 85.7%が致死するのに対し、あらかじめ酪酸菌(宮入菌)を定着させた無菌マウスにおいては、20%が致死するにとどまった。 
  • 8)  ウサギ、マウスによる毒素原性大腸菌誘発下痢モデルにおいて、酪酸菌(宮入菌)を投与することにより、腸管水分貯留を有意に抑制した。
  • 9)  酪酸菌(宮入菌)の主要な代謝産物である酪酸は、腸管毒素原性大腸菌による毒素の産生を抑制した(in vitro)。
  • 10)  モルモット摘出回腸縦走筋標本において、生体内下痢誘発因子であるセロトニンにより生じる縦走筋収縮に対して、酪酸菌(宮入菌)培養濾液と酪酸がこれに拮抗作用を示した (in vitro)。
  • 11)  酪酸菌(宮入菌)はアミラーゼおよびビタミン B 群(B1B2B12・ニコチン酸・葉酸)を産生した(in vitro)。
  • 12)  酪酸菌(宮入菌)の代謝産物である酪酸は、消化管粘膜上皮細胞の増殖促進作用や腸管内において水・ナトリウムの吸収促進作用、結腸や直腸などの運動に対する一過性の亢進作用を示し、また大腸粘膜上皮細胞の重要なエネルギー源として、ブドウ糖よりも利用されやすい。
  • 13)  マウスに 4 種の抗生物質の各 10 倍量と酪酸菌(宮入菌)を各々併用投与しても、糞便中からは投与した菌が生存したまま回収されてくる。
  • 14)  メトロニダゾールを投与して嫌気性菌を減少させたラットで、メトロニダゾール投与後に酪酸菌(宮入菌)を投与した群(投与群)と投与しなかった群(非投与群)を比較すると、投与群においては、非投与群よりも糞便中の嫌気性菌数と短鎖脂肪酸濃度がより早く増加し、さらに糞便中の含水率と残存有機物量が有意に減少し、腸内環境が正常化された

 

デノパミン

この薬は日本で開発された医薬品で、動物用医薬品としては販売されていないものです。

日本で開発された薬品でも海外で広く利用されている製品もありますが、デノパミンのように国内でのみの利用にとどまる製品が非常に多いことは日本企業の弱点として問題視されています。

デノパミンは、犬や猫で多くの実験が行われており、心疾患の犬や猫に対しどのような効果があるのかよく研究されています。
(現在は動物愛護の観点から犬での実験は行われなくなりましたが、過去には多く実施されていました)
従って心疾患の犬(特に僧帽弁閉鎖不全症)に対して使用しやすく、効果の高い薬品ですが、やはり海外の薬用量マニュアルや循環器の成書に掲載がなく、処方する獣医師がほとんどいないのが現状です。

 

薬理作用

(1)作用部位・作用機序 
心筋細胞膜上のアドレナリンβ1受容体を選択的に刺激することにより、心筋収縮力を増強する。 

(2)薬効を裏付ける試験成績 
心筋収縮力を選択的に増強し、心拍数、血圧への影響は少なく、また不整脈誘発作用も弱い。


1.
心筋収縮力増強(陽性変力)作用 
・摘出心筋(モルモット)の収縮力をouabain(ジギタリス様物質)と同程度増強させる。
0.4mg/kgを単回経口投与した場合、心筋収縮能(LV dp/dt max)の増強は 1 ~ 2 時間後ピークに達し(66%増強)、7 時間持続する。血圧、心 拍数には有意な変化は示さない(イヌ)。

2. 心拍数、心筋酸素消費量、血圧に及ぼす影響 
・同程度の心筋収縮能増強作用を示す用量での心拍数増加作用は、 isoproterenolの約1/3である(ネコ)。
・心筋収縮能(LV dp/dt max)を20%増加させる量では心拍数、血圧、 心筋酸素消費量は有意な変化を示さない(イヌ)。

3. 末梢血流に及ぼす影響 
・心拍出量増加に伴い冠血流量、腎血流量並びに大腿動脈血流量、総頸動脈血流量を増加する(イヌ)。 

4. 不整脈誘発作用 
期外収縮、心室細動の発生はouabainが発生させる量の30倍量の静注においても発現しない(モルモット)。

5. 作用機序 
アドレナリンβ1受容体に選択的な刺激剤である。isoproterenolに比べ心筋のcAMP産生が少ない量で同程度の心筋収縮力増強作用を示した(イヌ)。

 

デノパミンは肺血管に対しても拡張作用を示す

文献よりデノパミンは肺血管に対しても血管拡張作用があり、非常に利用価値の高い薬剤です。

二次性肺高血圧症における Denopamine の循環動態および血液ガスにおよぼす急性効果 
(日本胸部疾患学会誌)

抄録

肺高血圧を呈する慢性肺疾患患者13症例を対象に, denopamine の循環動態および血液ガスにおよぼす急性効果を検討した. denopamine の投与により, 肺動脈圧, 肺血管抵抗は有意に低下し, 心拍数は有意に増加した. 心係数は, 有意ではないが増加傾向を示した. 体血圧, 体血管抵抗には有意な変化を認めず, また肺・体血管抵抗比は有意に低下したことから, denopamine が肺血管に比較的選択的に作用することが示唆された. 一方, 血液ガスに対しては, PaO2 は有意に上昇し, PaCO2 は有意に下降した. 組織酸素化能の指標とされる混合静脈血酸素分圧は統計学的に有意に上昇し, 酸素供給係数, 酸素消費量には有意な変化を認めなかった. 以上より, 慢性肺疾患患者の肺高血圧症において, 循環動態および組織酸素化の改善に関して, denopamine の有効性が示唆された.

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