犬と猫のリンパ腫について

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犬・猫のリンパ腫について

犬、猫の腫瘍性疾患の中でリンパ腫は比較的多く、リンパ球と言われる細胞が腫瘍化し、たくさん増えてしまう病気です。
一言にリンパ腫と言っても様々なリンパ腫があり、症状、治療法や予後は様々です。
リンパ腫の分類は大きく3つに分ける事ができます。
それは①発生部位②悪性度③免疫学的による分類で、ここで簡単に説明致します。

①発生部位による分類

   多中心型
   消化器型
   前縦隔型
   鼻腔内型
   皮膚型
   その他(肝臓、腎臓、脊髄など)

  • 多中心型リンパ腫

身体の中にはたくさんのリンパ節があります。多中心型リンパ腫は基本的には身体の表面にあるリンパ節が腫れる腫瘍で、犬のリンパ腫で最も多い腫瘍です。猫では少ないですが、13FeLV(猫白血病ウイルス感染症)陽性で後述するT細胞由来と言われています。症状としては体重が減ったり、食欲元気がない、熱が出るなどですが、症状が伴わないことも多いです。

  • 消化器型リンパ腫

消化器型リンパ腫は猫に最も多いリンパ腫で胃、小腸、大腸に発生します。その為、嘔吐や下痢が生じ、それにより元気や食欲が低下し、体重が減少することもあります。

    • 前縦隔型リンパ腫

前縦隔型のリンパ腫は胸の中や胸のリンパ節に発生するリンパ腫の総称です。犬よりも猫に多く、より若い猫に多いとされています。この縦隔型リンパ腫の80%の猫がFeLV(猫白血病ウイルス感染症)陽性と言われています。症状としては胸にできるので、苦しくて呼吸が早くなったり、咳がでたり、胸に水が溜まってしまうこともあります。猫の場合、呼吸が苦しいと口を開けて呼吸をするのでそのような症状がでたら要注意です。

  • 鼻腔内型リンパ腫

鼻の中にできるリンパ腫でそのほとんどが猫に発生します。鼻水、鼻血、くしゃみ、顔が変形することもあります。

  • 皮膚型リンパ腫

皮膚に発生するリンパ腫で、皮膚が赤くなり、出血やただれが生じます。口内炎のように口の中の粘膜に症状がでることもあります。

  • その他

 

②悪性度による分類

リンパ腫の大半は高グレード、中グレード、低グレードに分類されます。このグレードにより抗がん剤の種類や余命が変わっていきます。

 

③免疫学的による分類

リンパ球はT細胞とB細胞に分けることができます。典型的にはT細胞性リンパ腫の方がB細胞性リンパ腫と比べて悪いことが多いです。鼻腔内型リンパ腫はB細胞性由来のものがほとんどです。

これらの分類により 多中心型高グレードT細胞性リンパ腫 などとなります。

 

リンパ腫の検査と診断

リンパ腫を疑うようなリンパ節や臓器の腫れ(いわゆる“しこり”)が見つかるパターンは様々です。犬で最も多い《多中心型リンパ腫》の場合、オーナーさんが腋や股のしこりを見つけて来院してくださる場合がほとんどです。一方、猫で最も多い《消化器型リンパ腫》など、体の内部にできるリンパ腫の場合は、超音波検査レントゲン検査でしこりが見つかることが多いです。

リンパ腫を疑うようなしこりが見つかった場合には、次にしこりに注射器の針を刺して細胞をとる検査(細胞診)を行い、リンパ腫かそうでないかを判定します。多くのリンパ腫は細胞診のみで診断できますが、一部のリンパ腫は細胞診を専門の検査機関で診てもらったり、遺伝子検査という特殊な検査にかけたり、場合によっては全身麻酔下でリンパ節を切除し、それを病理検査というものにかける必要があることもあります。

これまでの検査でリンパ腫と診断される、あるいはリンパ腫が疑わしいとなった場合には全身状態の把握とリンパ腫がどこまで体の中に広がっているかを判定するために、血液検査尿検査超音波検査レントゲン検査など全身の検査が必要になります。

リンパ腫は程度の差はあれ全てが悪性のガンです。詳しい検査による正しい診断が後述の治療が成功するカギになります。

 

リンパ腫の治療と予後について

  • リンパ腫の治療

リンパ腫は抗がん剤が効きやすい病気です。そのため、抗がん剤治療が選択されることが多く、特に数種類の抗がん剤を使う「多剤併用療法」を行います。薬剤によって違いますが、1週間に1回の頻度でおよそ半年間の通院治療を行います。副作用の早期発見のため、ご家族には自宅での体温や呼吸数の計測、元気や食欲を観察していただき、病院とご家族が協力して治療を行っていきます。抗がん剤治療では、高い効果も期待できますが、副作用によって休薬が必要になることもあります。また、皮膚型リンパ腫や再発性のリンパ腫に対しては1種類の抗がん剤を使う「単剤療法」が選ばれることもあります。B細胞性やT細胞性といったリンパ球の種類によっても抗がん剤への反応が異なり、一般的にT細胞性リンパ腫は抗がん剤が効きにくいとされています。消化器型リンパ腫や一部にとどまっている皮膚型リンパ腫に対して、手術で切除することもあります。また、リンパ腫は放射線治療が効きやすいがんのため、鼻の中や限局した皮膚型リンパ腫に対して行います。

 

  • リンパ腫の予後(余命)

リンパ腫が発見される段階にもよりますが、リンパ腫のグレード分類における低分化型リンパ腫(高悪性度リンパ腫)では、進行がはやく、無治療の場合は12ヶ月といわれています。抗がん剤治療をはじめとするがん治療に対してよく反応してくれる患者さんの場合は、半年~12年存命できる子もいます。治療終了後に残念ながら再発してしまい、治療への反応がよくない患者さんでは、予後はあまりよくありません。一方、グレード分類における高分化型リンパ腫(低悪性度リンパ腫)は、進行がゆるやかであり、無治療でも数年生存できる場合があります。進行によって首元のリンパ節が腫れて呼吸がしづらくなるなど症状がでた場合は、抗がん剤治療を行います。

 

(獣医師、奥冨、林、山田)

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