犬と猫の炎症性腸疾患

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炎症性腸疾患について

炎症性腸疾患はIBD(inflammatory bowel disease )とも呼ばれ、当院でも数多くの症例を診させていただいております。
好発犬種の代表とされているジャーマンシェパードの印象は薄く(飼育頭数が少ないため?)、当院ではボストンテリアの診療頭数がかなり多く、ボストンテリアに発症が多いという印象を持っています。
その他には、ヨークシャーテリア、ミニチュアダックスフンドなどに多い傾向があるよう感じており、また猫にも発症が認められます。

炎症性腸疾患とは、リンパ球や好酸球など白血球の1種類が主体となって大量に腸粘膜に浸潤し、腸の障害を起こす疾患を言いますが、なぜそれが起こっているかが不明である、つまり原因不明の疾患なのです。

 

 

炎症性腸疾患の診断

炎症性腸疾患はこの診断が非常に重要となりますがここでは診断基準を極めて簡潔に述べておくにとどめておきます。

1)慢性の消化器症状が認められる
2)犬と猫の慢性下痢症で示した炎症性腸疾患以外の疾患が除外できる
3)腸粘膜の病理組織検査で炎症細胞の浸潤が認められる

 

 

炎症性腸疾患の治療


治療は内科療法主体となります。
使用する薬剤はプレドニゾロンで、免疫抑制量での開始となります。
つまり1日量として体重1kg当たり2〜4mgで投与を開始し、時間をかけて徐々に減らし、症状が出ないで済む最小量を探して維持量とします。

治療について問題となる点がいくつか存在します。
1)ステロイドで効果が現れない場合
2)ステロイドを体重1kg当たり1mg以下にすることができない場合
3)そもそもの話で、飼育者がステロイドの投与に強い拒否反応を示す

1)と2)の場合は 他剤(シクロスポリンなどの免疫抑制剤)との併用を考えます。
3)も実際によく遭遇する問題ですが、我々がしっかりと説明し納得してもらえるようにしなくてはなりません。
炎症性腸疾患と診断されたならば、ステロイドの使用をしないだけではなく、使用を遅らせるだけでも予後に影響が出る可能性があることを認識しておかなければなりません。
炎症性腸疾患に罹患した犬や猫のQOLや延命期間を最大限にしてあげられるような選択をしていただきたいと考えています。

別の治療薬
当院では炎症性腸疾患にサラゾスルファピリジン(サラゾピリン)やメサラジン(ペンタサ)を処方することがあります。
これらは炎症性腸疾患の中の主に潰瘍性大腸炎の治療薬として知られていますが、その他のタイプの炎症性腸疾患にも効果を示す可能性があります。

サラゾスルファピリジンは元々は海外で慢性関節リウマチの治療薬として開発されました。
しかし、炎症性腸疾患に効果があったことからその作用の方が有名となった薬です。
作用機序は、抗菌作用、抗炎症作用(効果発現には数週間がかかる)、免疫抑制作用が協力し合ってのものと考えられていますが、はっきりしたことはわかっていません。

メサラジンはサラゾスルファピリジンからスルファピリジン除いたもので副作用が少なくなっています。
しかし副作用と引き換えに大腸に対する効果が低くなるという例もみられるようです。

その他の選択肢

人ではエビデンスのあるプロバイオティクスやサプリメントの使用も治療の補助として選択肢のひとつにあげられます。

当院では、人やマウスなどで効果があると発表された2種類の成分を複数の犬で試していただき、良好な効果が確認されています。
特に最近プロバイオティクスの1種で良好な成績が得られており、さらに例数を重ねたいと考えております。

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