犬の慢性膵炎

犬の慢性膵炎について

慢性膵炎の症状

慢性膵炎の症状は、無症状もしくは一般的な消化器疾患の症状である嘔吐や下痢、食欲不振が主体で、嘔吐や下痢による脱水症状や体重の減少、さらに腹痛も起こりますが、膵炎以外の慢性消化器疾患との鑑別が困難な疾患です。
しかし現在では膵炎を診断する精度の高い検査が利用できるようになり、以前と比べ診断が容易になりました。

慢性膵炎の食事制限

慢性膵炎の場合、一般的には低脂肪食を無期限に与え続ける事が推奨されています。しかし最近では食事に関する制限についてかなり状況が変わってきております。
脂肪の過度の制限によって様々な栄養障害が出ていることに加え、最近の知見ではアミノ酸及びオメガ3脂肪酸の摂取は膵臓の消化酵素を出させる刺激にはならないことが報告されており、オメガ3脂肪酸摂取を推奨する傾向にあります。

 

 

犬の慢性膵炎とサプリメント

オメガ3脂肪酸は膵臓の炎症を抑える

ヒトといくつかの動物種でオメガ3脂肪酸の摂取は膵臓の炎症(慢性のみならず急性も)を抑えるよう働きかける事が報告されています。
さらにヒトの膵臓癌に対し効果を示す事も伝えられています。
一つはターメリックと併用しがんの縮小を認めた報告、別の報告では切除不能の膵臓癌患者の生存期間がオメガ3脂肪酸を摂取しない場合の63日〜130日だったのに対し、オメガ3脂肪酸豊富な食事を摂取した場合130〜259日に延長した事を伝える論文が出ており、犬でも同じ効果が得られる可能性が十分にあると考えています。(The consumption of omega-3 polyunsaturated fatty acids improves clinical outcomes and prognosis in pancreatic cancer patients: a systematic evaluation.)

膵炎とオメガ3脂肪酸に関する記事

以下のウェブページに弘前大学大学院医学研究科内分泌代謝内科の “脂質が慢性膵炎に与える影響” の質疑応答が記載されており、オメガ3系脂肪酸は急性膵炎とともに,慢性膵炎の進展を抑制できる可能性があることを紹介しています。

オメガ3脂肪酸の与え方

慢性膵炎の急性増悪期以外に低脂肪食に加えオメガ3脂肪酸サプリメントを与えます。
急性増悪期にはオメガ3脂肪酸サプリメントの投与を一時ストップし低脂肪食のみとするもしくは症状の重い場合は絶食に加え対症療法を実施します。
急性増悪期は、当院では念のためオメガ3脂肪酸を一時ストップとしていますが、上記の記事にある急性膵炎にも抗炎症作用を発揮するので今後急性増悪期も継続して使用ことを推奨するようになるかも知れません。

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