獣医救急救命の専門医による講演

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先日開催されたFASAVAのプレコングレスにおいて、VCA West LA Hospitalの救急救命部門長でAmerican College of Veterinary Emergency and Critical Care (ACVECC)認定の専門医ネイサン・ピーターソン先生の講演があり、参加して参りました。
最新の情報を交えながらの素晴らしい講演でした。
その講演のハンドアウトを、当院獣医師のための備忘録も兼ね、修正せず掲載します。

 

IV輸液療法

Nathan Peterson, DVM, DACVECC
VCA West Los Angeles Animal Hospital
カルフォルニア州ロサンゼルス

 突きつめれば、輸液とは、さまざまな目的で調合された、さまざまな濃度のさまざまな溶質を含む水溶液である。輸液には、電解質、ブドウ糖、合成コロイド粒子、タンパク質(アルブミンおよび凝固因子)、赤血球などの溶質が含まれている。体重の約60%は、さまざまな身体コンパートメントに分布する水で構成されている。通常の状態では、総体水分は細胞内体液コンパートメントおよび細胞外体液コンパートメントに分けられ、総体水分の66%が細胞内空間内に存在する。細胞外水分と呼ばれる全身の残りの33%は、血管内(25%)と血管外(75%)の空間に分布している。

 細胞内空間と細胞外空間の水の電解質組成は大きく異なる。細胞内に最も偏在する陽イオンはカリウムであり、ナトリウム、カルシウム、マグネシウムからの寄与は比較的小さい。細胞内液中の主要な陰イオンは、リン酸塩、タンパク質、重炭酸塩である。これらのイオン勾配は、エネルギー依存プロセスにより維持され、ナトリウム-カリウムATPaseポンプが最も重要な寄与因子である。

 細胞外水分の電解質組成は対照的に、カリウム、カルシウム、マグネシウムの寄与は無視でき、ナトリウムが主要な陽イオンであり、重炭酸塩、リン酸塩、タンパク質からの寄与が比較的小さく、塩化物が主要な陰イオンである。腎臓は細胞外体液内の電解質濃度を維持する。

 浸透圧(重量モル浸透圧濃度)、膠質浸透圧、静水圧の3つの力のバランスにより、体内での水の動きが決まる。水中の電解質や糖などの小分子によって浸透圧が決まる。これらの分子は、特定の輸送システムなしでは細胞膜を通過することはできないが、濃度勾配に応じて細胞内と細胞外の液体空間の間を自由に移動できる。膠質浸透圧またはコロイド浸透圧は、血管内空間と血管外空間の間を自由に移動できないタンパク質などの大きな分子の濃度によって決まる。静水圧は、水が膜に対して及ぼす機械的圧力であり、溶液中に存在する粒子とは無関係である。

 患者は、下痢または嘔吐などによる体液損失の増加、水分摂取量の減少、またはコンパートメント間の体液移動など、さまざまな理由で輸液療法を必要とする場合がある。利用できる輸液の種類は、クリスタロイド輸液(等張、低張、および高張)またはコロイド輸液(合成、天然、血液製剤、および血液代用剤)に分類できる。

 等張性クリスタロイド輸液には、電解質や糖などの水溶性分子が含まれている。膠質浸透圧には作用しないため、等張性クリスタロイド輸液は、脱水やショックなどの等張性の体液損失時の体液補給として使用できる。これらの輸液は、輸液に含まれる電解質が血漿内の電解質に類似しているため(つまり、血漿が輸液で置換される)、置換輸液と呼ばれることが多い。置換輸液は、血漿量を急増させるが、投与された輸液の75%は、30分以内に間質腔内に漏出する。置換輸液には、一般に塩化カリウムとデキストロースが添加物として含まれる。最も一般的な置換輸液の選択肢は、0.9%塩化ナトリウム、Normosol R/Plasmalyte 148、および乳酸加リンゲル溶液である。

 維持輸液は、毎日身体で消費される液体と電解質の量を補給するために使用される。通常、日常の体液損失は低張性であるため、維持輸液も低張性であり、通常、置換輸液よりもナトリウムと塩化物は少ないが、カリウムが多く含まれている。維持輸液には、Normosol-M/Plasmalyte 56および0.45%NaClがある。場合によっては、電解質が含まれない純水を補給する必要がある。その場合、輸液としてはD5Wを選択する。D5Wは、血栓性静脈炎を防ぐために5%のデキストロースを加えた水である。

 クリスタロイド輸液の最後のカテゴリーは、高張性輸液である。高張性クリスタロイド輸液は通常、1つのコンパートメントから別のコンパートメントに液体を移動させるために使用され、電解質を含むものと含まないものがある。最も一般的に使用される高張性クリスタロイド輸液は、高張食塩水(3%、5%、7.2%)またはマンニトールである。

 コロイド輸液は、血管膜を容易に通過できない大きな分子を含む水溶液である。これらの大きな分子は、合成物(澱粉化合物)または天然物(タンパク質)であり、ほとんどの場合、0.9%塩化ナトリウムの基礎液を使用する。コロイド輸液は一般に、コンパートメント間で体液を移動させ、血漿コンパートメント内に水を保持するために使用される。通常、コロイド輸液投与後の血漿量の増加は、注入される輸液量よりもわずかに大きい。発生する体液移動の程度は存在する分子数に依存するが、効果の持続時間は分子サイズと関連する。利用可能な最も一般的な製剤は、ヘタスターチ(例えばヘスパン)とテトラスターチ(ベトスターチ)である。天然のコロイド輸液には、ヒトおよびイヌのアルブミン製剤と血漿製剤(新鮮凍結血漿または凍結血漿)がある。

 輸液治療計画の策定は、輸液量の計算から始める。この計算には、患者の毎日の体液維持の必要性(代謝による体液の損失)、脱水症の有無、および呼吸器による損失、尿による損失、糞便による損失を含む進行中の損失を考慮する必要がある。維持速度を計算するための多くの公式がある。次の式は使いやすく、最も頻繁に使用される:輸液維持速度(mL) = [体重(kg)×30] + 70。次のステップは、投与経路の決定である。最も一般的なオプションは、静脈内、骨内、皮下、および経口である。静脈内経路を選択する場合、カテーテル挿入部位の外科的準備の後に、カテーテルを腕頭静脈、伏在静脈(内側または外側)または頸静脈に挿入できる。理想的には、静脈に無理なくフィットする最大ゲージのカテーテルを選択し、配置したらテープで固定する。

 輸液ポンプまたは重力により輸液を送達できる。重力を利用する場合、選択した投与セットでの1 mLあたりの必要ドロップ数を決定する必要がある。毎時流量を60で割り、mL/minに変換する。次に、このmL/min流量にmLあたりのドロップ数を掛けて、1分あたりのドロップ数を決定する。流体計画を定めた後、毎日の体重と臨床的変化を追跡し、治療に対する患者の反応を監視することが重要である。

 輸液療法では、いくつかの合併症が発生する可能性がある。合併症としては、電解質障害、体液過剰(コロイド)、血液凝固障害(コロイド)、アレルギー反応、血栓性静脈炎などの可能性があり、輸液の種類の選択、輸液投与量、カテーテル管理などが原因となる可能性がある。電解質障害発生による合併症を防ぐため、呼吸数を毎日監視し、カテーテル挿入部位と四肢を毎日評価する必要がある。

 

重傷動物の疼痛管理

Nathan Peterson, DVM, DACVECC
VCA West Los Angeles Animal Hospital
Los Angeles, CA

 

 効果的な疼痛管理の重要性は、倫理的な疼痛の改善に留まらない。疼痛の存在は、交感神経緊張とカテコールアミン分泌を増加させ、心拍出量の増加、末梢血管抵抗の増加、そして、心筋酸素消費量の増加を引き起こす。これらの変化は、闘争・逃走反応にとって重要であるが、長時間に及ぶ場合、組織への酸素送達をさらに損なわせる。疼痛の循環器系に対する影響に加え、神経内分泌反応が発生し、アナボリックホルモンインスリンとテストステロンが同時に低下する一方で、異化作用ホルモンが増加する。神経内分泌反応の正味結果は、高血糖、B型高乳酸塩血症、およびケトン体生成によって特徴付けられる異化状態の発症である。疼痛の治療は、これらの反応の低減または除去し、動物評価を容易にし、動物のQoLを改善し、そして、より速やかな治癒および罹患状態の低減に導く。

 重度の外傷または熱傷の動物では、重度の疼痛が伴うものと考えるべきであり、鎮痛治療を惜しみなく与えるべきである。外傷または熱傷動物における最高の疼痛管理方法は、多様アプローチの使用である。純オピオイド作動薬は、疼痛管理の主軸であり、治療の初期段階において投与すべきである。オピオイド剤には、天井効果がない。すなわち、さらなる投与が結果に影響を及ぼす最大用量がない。ほとんどの場合、投与は、入院期間全体を通じて継続すべきである。オピオイドは、動物において呼吸駆動を低下させる可能性があるが、臨床的に問題となることはまれである。動物の換気駆動に懸念がある場合、オピオイドの用量を減量するか、少量に分割して投与することができる。

 解離性薬剤ケタミンは、とくに表在性疼痛に対して一部の鎮痛性特性を有する。しかし、おそらく、脊椎変調し、中枢感作(ワインドアップ)を防止または改善するケタミンのn-メチルDアスパラギン酸(NMDA)拮抗特性がより重要である。感作防止に関するケタミンの恩恵を得るためには、持続静脈内投与(515mcg/kg/分)として、少なくとも24時間投与すべきである。ケタミン単剤では深部痛または臓器疼痛には効果的ではなく、行動変化を引き起こす可能性があり、ケタミンは、ほぼ必ず、オピオイドと併用投与すべきである。24時間以上CRIの行われた動物においてケタミンを中止する場合、突然の中止に伴う行動変化を防止するため、数時間かけて注入速度を漸減させる。

 臨床において、鎮静には、α2作動薬が最も一般的に使用されているが、疼痛管理における使用も増えている。半減期が短く、可逆性がることにより、理論的に、多くの外傷動物において魅力的なオプションとなるが、臨床的に有意な循環器系に対する副作用がある可能性があり、慎重に使用すべきである。ショック状態にある、あるいは有意な心疾患(とくに収縮機能の低下を引き起こす疾患)を有する動物には、α2作動薬を投与すべきではない。疼痛管理プロトコルの一部として本クラスの薬剤を最も効果的に使用するために、多くの場合において持続静脈内投与が使用される。0.52mcg/kg/hrの投与速度で使用した場合、デクスメデトミジンは、有意な循環器系副作用なしで不安緩解と鎮痛が得られる。

 部分または局所麻酔は、従来の全身鎮痛法の補助と考えるべきである。これらの介入では、全身麻酔または鎮静が要求されることが多く、部分または局所麻酔の使用では、多くの場合、外科チームとの調整が要求される。該当する場合、局所麻酔薬剤の反復投与のための拡散カテーテルの設置を外科手技時に考慮すべきである。しかし、汚染創(咬傷)での使用は避けるべきである。硬膜外投与または硬膜外カテーテルの設置は、骨盤肢または骨盤環外傷を有する動物において優れた疼痛管理を提供することができる。仙骨骨折または仙腸骨脱臼が存在する、または、硬膜外投与に使用するランドマークが外傷の影響を受けている場合、硬膜外投与は実施すべきでない。また、局所麻酔剤は、イレウス管理における鎮痛の補助剤および機能調整剤として有用なリドカインを静注することで全身的に使用することもできる。

 鈍的外傷および熱傷のどちらも極めて顕著な炎症性状態を引き起こす可能性がある。非ステロイド系抗炎症剤は、これらの動物において極めて有益な可能性があるが、重度の外傷を有する、ショック状態の動物においては、すべての組織灌流が正常化され、突然に変化することがないと判断されるまで、NSAIDを投与すべきではない。重度の軟組織損傷または圧挫を有する動物は、ミオグロビン尿症と腎不全を発症するリスクがある。色素尿症を有する、または腎機能不全のエビデンスを示す動物には、NSAIDを投与すべきではない。NSAIDの使用の判断は、意図的であるべきであり、適切な症例では、NSAIDは極めて有用な鎮痛補助剤となる可能性がある。これらの動物では損なわれている免疫系のさらなる障害を含む全身性副作用のリスクがあり、とくに必要とされる場合を除き、重度の外傷または熱傷を有する動物にはコルチコステロイドを投与すべきではない。

 重度の軟組織損傷を有する動物の多くでは、複数日にわたって反復鎮静を要する事象があり、また、場合によっては、24時間以内に反復鎮静を要する事象が認められることさえある。反復鎮静が要求されると考えられる動物は、入院の早期段階において特定されるべきであり、治療を調整するための措置を講じるべきである。同一麻酔薬による反復鎮静後、回復により長時間かかるようになり、また、耐性のために同一レベルの鎮静を達成するために、より多くの量が必要となることが一般的に認められる。耐性化、またはネコに対するプロポフォル投与において報告される反復投与の毒性を防止するため、鎮静プロトコルは、23日ごとに変更すべきである。さらに、連続的に鎮静された動物では、反復絶食のため、栄養が欠乏するリスクがある。栄養を供給する機会を最大化するためにも、鎮静は可能な限り、毎日、同時刻に行うべきである。

 

現実的な凝固検査

Nathan Peterson, DVM, DACVECC
VCA West Los Angeles Animal Hospital
Los Angeles, CA

 

 

 歴史的に、止血は、血小板によって媒介される一次止血と可溶性凝固因子によって媒介される二次止血の2つのカテゴリに分けられている。正常な止血は、組織因子とコラーゲンの曝露に至る内皮の損傷から始まる。この組織負傷が発生すると、局所血管収縮が起こり、損傷した血管への血流が減少する。血小板が活性化されて、内皮下コラーゲンおよびフォン・ヴィレブランド因子(vWF)と結合する。これらの血小板は、形状を変え、他血小板を引き寄せるために顆粒を放出し、結果、一時的な血小板血栓が形成される。血小板血栓の形成と同時に、可溶性因子が主に、組織因子経路(外因性)を介して活性化され、最終的に、血小板血栓を安定させて、持続する止血を提供するフィブリン網を形成する。

 出血動物の血流動態系の検査は、包括的な既往歴の確認から開始される。具体的には、特定個体、あるいは系統における介入が要求された出血の既往歴を確認すべきである。これには、血液製剤輸注、包帯法または外科手技の必要性が含まれる。粘膜色、脈拍の質、毛細管補充時間、呼吸数などの灌流パラメータについてとくに注意し、詳細な身体検査を実施すべきである。出血部位は、原因が止血の問題(すなわち、血管の完全性の喪失)に起因していないことを確かめるために評価すべきである。一次失血障害は、多くの場合、溢血点、出血斑または消化管出血を引き起こし、二次失血障害は、多くの場合、血腫形成または腔内出血(血胸、血腹、心膜液)に至る。

 一次止血の評価に利用可能な方法には、血小板数と頬粘膜出血時間(BMBT)が含まれる。血小板減少は、生産の減少、消費の増加、または破壊によって引き起こされる可能性がある。しかし、施設のCBC分析装置によって血小板数が自動的に得られるが、凝集(血小板凝集)、低試料品質、巨大血小板、そして、赤血球または白血球の断片によって結果に誤差が生じる可能性がある。血小板数の推定は、赤血球単層の血液塗抹を100倍の倍率で直接観察することによってマニュアルで行うことができる。本倍率において観察される各血小板は、おおよそ、15×103/ul血小板と等しくなる。複数の強拡大視野(HPF)の血小板数を平均し、合計に15×103/ulを掛けることで推定値が得られる。マニュアルでの血小板数推定では、かすれた端縁部は、血小板凝集塊の存在について慎重に評価しなければならない。正常な血小板数は、170400×103/ulの範囲である。

 頬粘膜出血時間は、正常な血小板数と凝固プロファイルが明らかな動物において実施される。理論的には、BMBTは、血小板機能、そして、血小板のvWFなどの内皮下コンポーネントとの相互作用を評価し、二次止血の障害に影響を受けない。残念ながら、BMBT検査は、実施者に対する依存性が高く、再現性が低く、軽度の出血障害の検出における感度が低い。

 最高の結果のためには、上唇の口腔粘膜の切開に市販のバネ式機器が使用される。動物を優しく拘束し、頬側粘膜を露出させるために唇を裏返す。検査機器は、粘膜に対して平坦に配置および展開され、結果、長さと深さの等しい2つの切開が得られる。血液は、形成する凝血を壊さないように注意しながら円形の濾紙を使用してそっと拭き取る。最終時間は、機器展開の時間から出血が止まるまでの時間である。正常なBMBT時間は、24分間である。

 二次止血は、通常、プロトロンビン時間(PT)と活性化部分トロンボプラスチン時間(aPTT)を測定することで評価される。プロトロンビン時間は、組織因子(外因性)と一般経路(第VII因子、第X因子、第V因子、プロトロンビン、フィブリノゲン)を評価し、血小板または内因性因子の影響を受けない。検査は、トロンボプラスチン、リン脂質、およびカルシウムに曝露されたクエン酸塩添加血を使用して実施される。第VII因子はビタミンK依存凝固因子(第II因子、第VII因子、第IX因子、第X因子)の中でも半減期が最も短いため、PTは、とくに殺鼠剤曝露のスクリーニング検査として有用であり、曝露の23日後に実施すべきである。重要なことは、通常、75%を超える因子活性が失われるまで延長が発生しないため、正常なPTが因子欠乏を明確に除外しない点である。

 活性化部分トロンボプラスチン時間は、内因性および一般経路(第XII、第XI因子、第IX因子、第VIII因子、第V因子、第X因子、プロトロンビン、フィブリノゲン)を評価する。また、aPTTもリン脂質とカルシウムに暴露されたクエン酸塩添加血液試料を使用して実施される。正常なPTとの組み合わせにおいて、aPTTは、血友病AVIII)またはBIX)のスクリーニング検査として有用な可能性がある。残念ながら、正常なPTでのaPTTの延長は、臨床的出血に至らないが、ネコにおいて比較的一般的に求められる第XII因子の欠乏によっても発生する。検査時間の有意な延長が発生するためには75%の因子活性が失われなければならないという点において、活性化部分トロンボプラスチン時間にもPTと同じ制限がある。

 究極的には、遺伝性または後天性の因子欠乏の確定診断は、個々の因子活性レベルが測定され、標準化された正常値と比較される特異的因子定量分析によって実施しなければならない。特異的因子定量分析は、可溶性凝固因子の大多数、そして、フォン・ヴィレブランド因子について存在する。おそらく、最も一般に評価されている可溶性因子はフィブリノゲンである。これは、いくつかの異なるデスクトップ分析装置で測定することができる。高フィブリノゲン血症は、炎症、ストレス、感染症、または播種性新生物によって引き起こされる可能性がある。低フィブリノゲン血症は、先天性、後天性(血液希釈、消費、DIC、敗血症)、あるいは肝合成の減少に起因する可能性がある。

 フィブリン溶解は、可用性が制限されるため、現実的ではない粘弾性検査を実施せずに、直接評価することが困難である。フィブリン溶解の間接的検査には、フィブリン変性物(FDP)とDダイマーの測定が含まれる。フィブリン変性物は、フィブリノゲンまたはフィブリンがプラスミンによって切断されることで生産される。FDPの上昇は、高フィブリノゲン血症でも認められるが、フィブリン溶解系が活性化されていることを示す可能性がある。Dダイマーは、成熟凝血の分解に特異的なFDP1種である。したがって、Dダイマーの上昇は、成熟凝血の分解を示す。

 

 

外傷に対する外科手技のタイミング

Nathan Peterson, DVM, DACVECC
VCA West Los Angeles Animal Hospital
Los Angeles, CA

 

 

 外科手技を必要とする動物は、大まかに、差迫した死亡を防止するために即時の外科手技を要する動物、血流動態の安定性は様々であるが外科的介入を要する負傷を有する動物、そして、安定し、半待機的に外科手技を受けることができる動物の3つのカテゴリに分類することができる。最初と最後のカテゴリの動物では、タイミングを考慮する必要はほとんどないが、2番目のカテゴリの動物ではジレンマが存在する。これらの動物は、多くの場合、重度の外傷を有し、長骨骨折、骨盤骨折、重度軟組織創傷、あるいは銃創などの負傷に対する外科手技が要求される可能性がある。ジレンマは、これらの動物が多くの場合において早期評価において特定することが困難な敗血症に似た炎症状態を発症することに起因する。最悪の場合、不適切なタイミングで外科的介入を受けた動物は、すでに存在する免疫応答の素地に加え、外科手技に伴う外傷/炎症のため、多臓器不全を発症するリスクにある。

 ヒトに対する外傷外科手技は、患者が「衰弱しすぎている」ため、すべての外科手技を遅らせるべきであるとした早期の考え方から、すべての患者が根治的外科手技を受ける「早期の総合的治療」アプローチに進化している。

 本アプローチは、多くの患者において転帰を改善するが、一部において悪影響を及ぼすことが認められている。ヒトの外傷管理における最新の勧告は、患者に対して早期に外科手技を実施するが、手技は必ずしも根治的ではない「ダメージコントロール外科手技」(DCS)アプローチを中心としている。DCSアプローチを受ける患者は、根治的治療を受けることができる程度に安定次第、再手術が要求される。DCSアプローチは、外科手技に伴う外傷を最小限に抑えながらベネフィットを最大化する(すなわち、継続した汚染または出血の防止)。

 外傷の病態生理学は複雑である。治癒のためには組織損傷の免疫的認識が必要であり、この認識は免疫系の活性化を介して起こる。外傷が重度な場合、この局所炎症反応が全身に拡がり、実質的に重度敗血症または敗血症性ショックと見分けがつかない病態となる可能性がある。外傷性事象後、2つの主要な因子が宿主防御反応を決定する。最初の、そして、最も重要な因子は、外傷による直接的な組織損傷であり、2つ目は炎症反応の後遺症である。直接的な組織負傷は、外傷の力と影響の重症度によって決定されて、一般に「最初のヒット」と呼ばれる。次に、この最初のヒットが二次応答または「2番目のヒット」の重症度を決定する。2番目のヒットは、内因性(最初の負傷に起因する合併症。すなわち、ショック、壊死など)または外因性(最初の負傷の治療の試みから発生。すなわち、外科手技からの外傷、麻酔、輸血など)とみなすことができる。

 腹腔内または胸腔内の臓器損傷は、鈍的外傷に伴う最も一般的な臨床上の問題である。肝臓、脾臓、腎臓、または主要血管の損傷に伴う出血は有意な可能性がある。胃腸管を含む腹腔内臓器に対する丼的圧挫損傷は、外傷時に発生する機械的損傷の程度のため、とくに、重度となる可能性がある。肋骨骨折、肺挫傷と気胸などの胸部外傷は、多くの場合、ショックおよび低酸素血症が伴う。

 長骨骨折は、一般に、骨損傷に加え、大量の軟組織損傷が伴う。ショックが発生すると、貴重な血流が中核臓器および生命の維持に必要な臓器に迂回されるため、四肢が一時的に犠牲にされる。この追加的な低酸素状態は圧挫またはせん断損傷を悪化させる可能性があり、虚血、再灌流障害、そして、二次感染の可能性を増加させる可能性がある。上腕、大腿、および骨盤骨折は、さらなる大量失血を引き起こし、ショックの持続時間と重症度に寄与する可能性がある。獣医学において、胴への鈍的外傷または圧挫咬傷は、全身性炎症反応症候群を引き起こす可能性が最も高い種類の外傷である。

 外傷に続く全身性炎症は、新たな細菌に反応し、また、非感染性および感染性の両炎症を媒介するように進化した免疫系の分岐である先天性免疫系の刺激に起因する。炎症反応が必要以上により強い場合、臓器損傷および機能障害を引き起こす可能性がある。典型的な例は、肺毛細管透過性が増加し、肺水腫の蓄積に至る急性呼吸窮迫症候群(ARDS)である。外傷時に、失血を最小限に抑えるため、免疫系の活性化と同時に凝固系の必要な活性化が起こる。これらの2つの系の間における複雑な相互作用のため、凝血原状態がさらなる免疫系の刺激に至る。究極的に、この刺激は、播種性血管内凝固の発症につながる可能性がある。

 現在、獣医学ガイドラインはないが、ヒトを対象とした文献から推定すると、複数の外傷を有する動物に対する外科手技の最悪のタイミングは負傷の24日後である。この時、全身性炎症反応と免疫変化が持続し、免疫系は、すべての追加的な外傷負荷に応答する。ヒトの外傷管理において多くの鈍傷を非外科手技で管理する方向にあることを鑑みて、一部の場合においては、外科的介入の必要性さえも疑われている。究極的には、外科的介入の理想的なタイミングは、動物によって大きく異なる可能性が高く、医師が適切な蘇生と外科的介入の遅延に伴う合併症(すなわち、敗血症、SIRSMODS)の予防の間のバランスについて判断しなければならない。

             

特定疾患カテゴリ:

 腹部鈍的外傷は、横隔膜ヘルニア、腹腔内出血、軸方向骨格骨折を含む多くの負傷を引き起こす可能性がある。これらの負傷における力は、破壊的な負傷、そして、死亡の原因となる可能性があり、全死亡率は1012%である。残念ながら、ヒトと動物試験は、腹部外傷の重症度の評価において、身体検査の所見および血液検査の結果の信頼性は低いことを示している。外科的介入の判断に影響する可能性がある診断検査がヒトと動物試験において検討されている。現在、腹部鈍的外傷を有するヒトにおける穿通損傷のための造影法としては、CTスキャンよりも迅速簡易超音波検査法(FAST)が好まれている。この検査の平均所要時間は6分間であり、最大45%の患者において遊離腹部流体が認められている。

 鈍的外傷の最も一般的な原因は、交通事故であり、全例の最大90%を占める。すべての鈍的外傷症例を合わせ、200頭のイヌからのデータを分析した1つの大規模後向き試験では、これらの動物の50%において何らかの外科的介入が要求され、8%において複数の外科手技が要求されていることが示されている(Simpsonほか)。これらの症例の72%において複数の外傷が認められたことは、これらの動物を特定の外傷サブタイプに分類することの難しさを示している(開放骨折と腹腔内出血など)。最も一般的な外科手技は,整形外科手技(63.5%)であり、次が軟組織手技(36.5%)であった。腹腔内出血は、23%の症例において認められ、また、ヘルニアは5%において認められ、緊急の外科手技を必要としたヘルニアは5%のイヌにおいてのみ認められた。本試験における入院から外科手技までの平均日数は、2.2日(+/-1.7日)であった。残念ながら、外傷または入院時に相対での外科手技のタイミングは、転帰について分析されなかった。死亡率と外科的介入の必要性、外科手技の長さ、麻酔の長さ、あるいは術後体温との間に有意な関連性は認められなかった。

 横隔膜ヘルニア(DH)は、外科手技のタイミングと転帰に関して獣医学文献において評価されている唯一の具体的な負傷である。DHの全死亡率は、6.320%の範囲であった。早期のエビデンスは、早期の介入(24時間未満)と死亡率の増加の関連性を示唆している。外科手技のタイミングと転帰を評価するために設計されたより最近の試験では、42.6%の動物が負傷の24時間以内に外科手技を受け、生存率は89.7%であった(Gibson)。これらの所見は、DH24時間以内の外科的介入が生存率に悪影響を及ぼさない可能性を示唆しており、前述の勧告とは矛盾している。重要なことは、本試験の動物の大多数は、外科手技のために専門施設に移される前のプライマリケアにおいて安定していた。逆に、一部の動物では、血流動態を安定させるために外科手技が必要となる可能性がある。

 腹部鈍的外傷は、泌尿器系の破裂を引き起こす可能性があり、実際、尿腹症(UP)の85%が腹部鈍的外傷によるものである。最大69%の動物が検査時までに排尿している、あるいは触知可能膀胱を有している可能性があり、本負傷の発見が困難な可能性がある。UPでは、一般に外科手技が推奨されているが、入院期間が延長するにもかかわらず(24週間)、保守的なカテーテル管理も報告されている。これらの動物において多く認められる酸塩基および電解質障害により、麻酔合併症のリスクが高いため、一般に、根治的外科修復の前に、胆嚢切開チューブ、尿道カテーテル、そして、腹腔内ドレナージを介した尿路変向が推奨されている。ネコを対象とした1つの大規模後向き試験では、負傷または呈示時間と転帰の間に相関性は認められなかった(Aumann)。イヌおよびネコでは、38.5%から42%の死亡率が報告されており、イヌにおいて診断の遅延と死亡率の増加の関連性が認められている。

 腹腔内出血は、末梢PCV25%以内のPCVを有する腹部滲出によって診断される。動物は、安定化を試みる前に、生命を脅かす出血によって死亡する可能性が高く、獣医学における情報不足の原因となっている。1つのレビューにおいて、持続する出血を止めることは、最初の安定化目標の4番目の目標であり、一部の症例では、外科手技を必要とすることなく管理することができる(腹部逆圧法)。体膨張、血液製剤、逆圧で動物を安定化することができない場合、緊急の外科手技が必要とされる。外傷性血腹に関する外科的介入のタイミングは分析されていないが、おそらく、外科的介入の必要性がまれと考えられるためと思われる。腹腔内出血、とくに外傷動物においては、動物の外科手技準備だけではなく、施設の準備も極めて重要である。腹腔内出血の外科的解消を試みる前に、代償不全動物に対する特定要員(麻酔医、主外科医、アシスタント)の必要性を考慮し、満たさなければならない。血液製剤を手術室に用意し、外科手技時間を短くすべきである。破滅的な出血が発生している場合、これには、迅速なクリップと準備が含まれることがある。すべての緊急および疼痛関連薬剤の用量は、導入前に算出すべきであり、また、必要な換気、血圧サポート、そして、集中麻酔モニタリングを保証すべきである。

 穿通外傷、とくに咬傷は、獣医学において一般的に認められ、生存率は38%から100%の範囲であることが報告されている。穿通外傷の外科手技に関する勧告の評価は、外傷の重症度と機序の多様性により困難である。腹部杙創では、負傷の程度、とくに突き刺さった状態では、異物が移動する可能性があり、直ちに明らかではないため、とくに緊急開腹術を考慮することが必要となる可能性がある。腹部射創を有するヒト患者は、多くの場合において外科的に管理されるが、非外科的に管理することもできる。最近の研究では、特定の基準を満たす患者では、初期の非外科的アプローチによって転帰に影響することなく非治療的外科手技を削減できることが示唆されている。

 咬傷に伴う外傷は、多く報告されており、生存率は7383%である。組織損傷の程度は、とくに咬傷の場合、目視検査および従来の放射線検査において、一般に、過小評価される。腹腔内負傷の可能性が高く、より重度の内部損傷を除外するための早期探索的外科手技が推奨されており、胸部または腹部の負傷を見つけるための外科手技が推奨されている。胸部外傷に関しては、一部において動揺胸郭、肋骨骨折、肺挫傷、または気胸の認められるすべての動物に対して探索的外科手技が推奨されているが、これらの潜在的に不安定な動物に対する外科手技の最適なタイミングは不明である。しかし、多くの臨床医は、これらの負傷を保守的に治療し、大きな成功を収めおり、1件の報告において、外科的に安定化された動揺胸郭と安定化されなかった動揺胸郭の間において転帰に有意差は認められなかった。

 獣医学では、脊椎の外傷では、臨床的治療はほとんど行われていない。これは、本サブセットでは、実際に転帰が不良である、あるいは転帰が不良であると思われることから多くの所有者が安楽死を選択するための可能性がある。イヌにおいて最も一般的な負傷部位は、T3-L3であり(2055%)、最大45%の動物において他負傷を併発している。脊椎外傷動物の約1/3は治療なしで安楽死させられ、1/3が外科治療を受け、そして、1/3が保守的に管理される。外科的介入の必要性は、脊柱不安定性、脊髄の圧迫、治療4872時間後において持続する疼痛、そして、神経学的ステータスの悪化によって決定される。

 交通事故による外傷性長骨と骨盤骨折は、鈍的外傷動物において最も一般に遭遇する問題のうちの1つであるが、本領域における多くの研究にもかかわらず、根治的外科手技による安定化の最適なタイミングについては論争の的である。獣医学においては、外傷動物の骨折管理に関する確定的なガイドラインは策定されておらず、動物が長時間の麻酔が必要となる可能性のある手技のために十分に安定していることの判断は外科医に委ねられている。長骨骨折を有するネコの最大5972%において他負傷が認められ、早期段階では、これらの潜在的に致命的な問題の同定および管理に集中すべきである。開放骨折において実施しなければならない緊急処置には、動物快適性のための鎮静/麻酔、大きな残屑の除去、クリッピング、創傷洗浄、培養調達、抗生物質の投与、および滅菌包帯での創傷の被覆が含まれる。残念ながら、これらの骨折の根治的治療時期に関する具体的なガイドラインは存在しない。

 究極的には、動物に対するDCS原則の適用は、探索されていない領域である。DCSアプローチの恩恵を受ける可能性がある動物のサブセットが存在する可能性があるが、これは実証されておらず、試みる場合においては、この制限について留意すべきである。DCSの実施にかかわらず、積極的な血流動態の安定化を要する外傷動物に対する外科手技の最適なタイミングは不明である。

 

 

 

 

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