ジギタリス回帰

ジギタリスの使用が見直される

犬の心臓病は皆様が思うより多く発症しているのではないかと思います。
特に小型犬は心臓病が非常に多く、高齢になると僧帽弁閉鎖不全症を患う子が増えてきます。
三尖弁閉鎖不全症も意外に多く発症しています。

心疾患の為の薬剤ジギタリスについて医療分野でも獣医療分野でも過去にジギタリスが良いと言われたり良くないと言われたり評価が二転三転してきました。
そんな中、近年ジギタリスの使用は他の薬剤より成績が悪いと言われ、あまり使用されなくなっています。
ジギタリスが死亡率を高めるなど、他剤に比べジギタリスに不利なデータが医療分野で発表されたりしたためです。

しかし医療分野では、再びジギタリスの効果が評価され、回帰する傾向が見られ始めています。
ジギタリスの使用は、他剤の使用と比べて死亡率が少し高くなると伝えられた解析データに加えさらに多くのデータに対し公正な解析を実施した結果、以前に伝えられた死亡率が高くなるという事はなく差がなかった事が判明し、再入院の可能性はジギタリスの使用により低くなることが判明したからです。

 

Safety and efficacy of digoxin: systematic review and meta-analysis of observational and controlled trial data
BMJ 2015;351:h4451
400万人対象のデータです。
過去の研究データでは、ジギタリスを使用している例がより高齢でより重症例であった事によって死亡リスクが増大するという結論になっていたことが指摘されており、より公正な解析をした結果死亡リスクは増大しないどころか再入院の率が低くなっていることを伝えています。

 

MEDPAGE TODAY の 2013年3月14日
Digoxin could be part of the solution to high hospitalization rates in heart failure, researchers suggested in a subanalysis of the DIG trial.
ジゴキシンは心不全患者の退院後の再入院率を低くする可能性を示唆しています。

 

 

医療における慢性心不全の薬物療法

日本内科学会雑誌 102 9 号・平成25 9 10日に掲載されました 第110回日本内科学会講演会の教育講演(吉村 道博 先生、東京慈恵会医科大学内科学講座循環器内科)の内容の一部を紹介します。
心不全のステージの中でステージAを超えるとジギタリスの投与を考慮する様になります。

慢性心不全の治療 : 心不全のステージ 別にみた薬物治療 

 

・ステージA(危険因子を有するが、心機能障害がない) 

高血圧、耐糖能異常、脂質異常症、喫煙等の危険因子を有する場合には、それぞれのガイドラインに従ってその是正および治療を行う。
特に、ステージAから積極的にACE阻害薬を開始する。
既に冠動脈疾患を発症している場合にはACE阻害薬はその二次予防に有用である。
ACE阻害薬に対する忍容性に乏しい場合にはARBを使用する。
カルシウム拮抗薬は心不全ではあまり使われることはないが、ステージAにおいては高血圧や虚血性心疾患の場合によく使われ、 冠攣縮を合併している場合は特に推奨される。 


・ステージB(無症状の左室収縮機能不全) 

まず、ACE阻害薬が適応となる。
ACE阻害薬の投与が副作用等で不可能な症例では、ARB を投与する。
心筋梗塞後の左室収縮機能不全であればβ遮断薬の導入も考慮する。
心房細動による頻脈を伴う症例ではジギタリスを用いること もある. 


・ステージC(症候性心不全) 

NYHA II度
ACE阻害薬に加えてβ遮断薬導入を行う。
Β遮断薬は心不全治療には無くてはならない薬物であるが、その投与量に関しては注意 が必要である。
必要以上を投与すると心不全はかえって悪化する事があり、重症例は専門医に相談する方が良い。また、ACE阻害薬やβ遮断薬を使う場合、血中のBNP(またはNT-proBNP)濃 度を測定しておくと心不全管理に有用であろう。 
肺うっ血所見や全身浮腫等体液貯留による症状が明らかである場合には、ループ利尿薬、サイアザイド系利尿薬を用いる。
洞調律で重症心室性不整脈を伴わない非虚血性心筋症には、低用量ジゴキシンの使用を考慮する。 

 

NYHA III
NYHAII度と同様に、ACE阻害薬、β遮断薬、ループ利尿薬、サイアザイド系利尿薬、ジゴキシンを用いる。また、スピロノラクトンを追加する。
昨今、スピロノラクトンや エプレレノンに関しては(国内ではエプレレノンの適応は高血圧のみ)、心不全の大規模臨床試験でさまざまな優れた結果が報告されており、以前にも増してその意義が注目されている。
一方で、腎機能低下例や糖尿病例においては高カリウム血症に注意が必要である。 

NYHA IV
入院治療が基本である。
カテコラミン製剤、フォスフォジエステラーゼ(PDE) III阻害薬、利尿薬、カルペリチド等の非経口投与を行い、状態の安定化を図る。
状態の安定が得られたならば、ACE阻害薬、スピロノラクトンを含む利尿薬、ジギタリス等の経口心不全治療薬へ切り替えていく。
さらにβ遮断薬導入を試みるが、β遮断薬に関しては前述の通り投与量には十分な注意が必要である

・ステージD(治療抵抗性心不全) 

体液管理と薬物治療が適正であるかを再度見直す。
心臓移植の適応について検討することもありうるであろう。
積極的治療によっても予後改善が期待されない場合は、本人や家族の同意のもとで苦痛の解除を主眼とする末期医療ケアを行うこともあるが、慎重な判断と対応が必要である。 

 

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