Oncology 腫瘍科のご案内

動物たちの
腫瘍(がん)について

日本人の死因第1位が「腫瘍・がん」になって久しいですが、近年、日本での犬の死因第1位、猫の死因第2位もそれぞれ人と同様「腫瘍・がん」であることが報告されました。ペットの高齢化に伴い腫瘍はとても身近な脅威となっていることが分かります。
ひとえに「腫瘍」と言ってもその種類は無数にあり、また同じ腫瘍でもその子により進行や病態が異なることが往々にしてあります。それゆえ、腫瘍の診断・治療法は多岐にわたり、その子その子に合わせた治療戦略を立案するためには専門的な知識が必要になります。

当院が行う腫瘍治療

医学的根拠(エビデンス)に基づき「外科療法・化学療法・放射線療法」を基本に、「電気化学療法」といった最先端の治療法も実践し、1頭でも多くの動物が腫瘍を克服できるよう日々努力を続けています。
さらに「緩和ケア」にも注力し、たとえ完治が望めない場合であっても、できる限り腫瘍による苦痛を取り除き、動物とご家族様が良い時間を過ごせるよう努めています。

外科療法

腫瘍治療において最も効果的なのは早期発見かつ完全な外科切除です。当院統括院長は、日本小動物医療センターに付属の日本小動物がんセンターにおける腫瘍外科手術を開設以来13年間に渡り実施して参りました。
その専門性を生かし当院において腫瘍外科を担当するとともに、勤務する若い獣医師の育成も行っております。
詳細な手術実績についてはページ下層をご覧ください。

化学療法

化学療法(抗がん剤治療)はリンパ腫などの血液腫瘍には主に単独で、その他の腫瘍には主に外科療法などと組み合わせて行うことができます。また、抗がん剤感受性試験を利用したオーダーメイド化学療法も実施可能です。
基本的に通院での治療となる特性上、ご家族様との密な連携・協力が治療成功の秘訣と考えています。
当院では、副作用や合併症のリスクを下げる処置を事前に行った上で、副作用等が発生した場合の対処法もご家族様には分かりやすくお伝えし、安心して治療を継続していただけるよう努力しています。

放射線療法

外科療法が実施困難な部位の腫瘍、実施しても根治が困難な腫瘍などには放射線療法が適用となる場合があります。実施には特殊な機器が必要となりますので、ご希望の場合には外部専門機関へ紹介させていただきます。

電気化学療法

腫瘍治療の新しい選択肢として電気化学療法が欧米を中心に注目されています。当院は日本でいち早く電気化学療法を取り入れ、多くの実施経験を積んできました。

担当獣医師のご紹介

  • 山田 祥平先生

    • 獣医師
    • 白石動物病院院長
    • 日本獣医がん学会 獣医腫瘍科Ⅱ種認定医

学術アドバイザーのご紹介

当院では月に1度、米国獣医内科学専門医の小林哲也 先生をお招きして腫瘍科の勉強会を行なっております。
※当院で小林先生の診療を受けることはできません。

  • 小林 哲也先生

    • 獣医師/獣医学修士
    • 米国獣医内科学専門医(腫瘍学)
    • 日本獣医生命科学大学 非常勤講師
    • アジア獣医内科学専門医(小動物)

ご相談が多い症状

こんな症状ありませんか?

  • しこりやできものがある:
    皮膚や体内に触れるしこりがある
  • 体重の減少:
    食欲があるのに体重が減る
  • 食欲不振:
    急に食べなくなったり、食事量が減る
  • 元気がない:
    遊ばなくなり、寝ていることが多くなる
  • 出血や分泌物:
    しこりから膿や血が出ることがある
  • 呼吸困難:
    腫瘍が肺や気道を圧迫し、息が苦しそう
  • 歩き方の異常:
    骨の腫瘍によって痛みや歩行の異常が見られる
  • 頻繁に嘔吐や下痢をする:
    内臓に腫瘍がある場合に起こりやすい

どれか一つでも当てはまったら、なるべく早く当院腫瘍科にご相談ください。

過去の手術事例

上顎・下顎の腫瘍

犬・猫の上顎や下顎には様々ながん・腫瘍が発生します。
これらは大きくなると摂食障害や呼吸困難などいろいろな問題を引き起こすようになります。
発生場所や腫瘤のサイズによっては切除手術が困難な場合が多いのが現状です。

手術の写真(こちらをクリック)
※ショッキングな画像が含まれているので、この疾患でお困りの方、手術をお考えの方のみご覧ください。
  • 手術前

  • 1年以上頑張りました

  • 手術術後

胸腺腫

心臓の頭側(前方)に出来る腫瘍の内の一種類で、一般に心臓の大きさ以下のサイズであれば摘出可能であるが心臓より大きなものは困難とされています。
しかし心臓よりも大きいサイズの胸腺腫であっても摘出可能な場合もありますのであきらめないでください。

手術の写真(こちらをクリック)
※ショッキングな画像が含まれているので、この疾患でお困りの方、手術をお考えの方のみご覧ください。
  • 開胸を行い腫瘤が見えています

  • 術後、摘出した腫瘤

  • 摘出した腫瘤

肥満細胞腫

人と犬・猫では大きな違いのある腫瘍です。
犬の肥満細胞(体の肥満とは関係なく、細胞の名前です)の集塊は悪性(程度は様々ですが)であることがほとんどであると考えられます。
外科的に切除することを必要としますが、完全切除のためには腫瘍周囲の正常組織をかなり大きく切除する必要があり、場所によっては切除困難となります。

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※ショッキングな画像が含まれているので、この疾患でお困りの方、手術をお考えの方のみご覧ください。
  • 手口唇の肥満細胞腫

  • 口唇の切除

  • 口唇切除手術直後

  • 口唇術後

  • 耳介の肥満細胞腫

  • 耳介切除中

  • 耳介切除直後

  • 耳介術後

膀胱癌

癌そのものによって生命を脅かされる前に、腎臓から膀胱へ尿が移動できずに起こる水腎症や膀胱から尿道へ移動できないための排尿障害などによって尿毒症になり死にいたることが多い疾患です。
当院では根治を目指し膀胱尿道全切除手術を行っています。

手術の写真(こちらをクリック)
※ショッキングな画像が含まれているので、この疾患でお困りの方、手術をお考えの方のみご覧ください。
  • 摘出した膀胱

  • 膀胱尿道の内腔

骨盤周囲の腫瘍

骨盤や大腿近位部の骨肉腫、軟骨肉腫、軟部組織筋肉などが発生し骨盤に影響が及んでいる場合、骨盤を残しての切除手術では不完全切除になってしまう様な場合でも、片側の骨盤を切除する事によって完全切除が可能になる場合があります。

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※ショッキングな画像が含まれているので、この疾患でお困りの方、手術をお考えの方のみご覧ください。
  • 右の骨盤に異常が認められる

  • 術前、傷は病理検査のためのものです

  • 手術直後

  • 術後のレントゲン写真

  • 術後3本足で歩行しているところ