ジビエと人獣共通感染症

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私は昔から赤い生焼けの肉を食べる事が好きではありませんでした(今では牛肉ならレアでも食べられますが) 。獣医学を学んでからはさらに怖く感じるようになりました。

            

禁止になって当たり前 レバ刺し

今では提供されなくなった生レバーですが、以前はよく「当店のレバーは新鮮なものを仕入れていますので刺身でも安心して食べて頂けます」などと宣伝していました。でも、そういう問題ではないでしょ!と思っていました。寄生虫感染に関しては、新鮮であればあるほどそこにいる寄生虫も新鮮です。マイナーな例ですが、牛や豚のレバーにはカンテツという寄生虫が寄生しています。成虫を食しても感染はしませんが、時にカンテツの幼虫が寄生しているレバーがあり、これを生で食べると我々もカンテツに感染する事が分かっています。この他にE型肝炎などもっと怖いたくさんの人獣共通感染症は存在していてレバーは本当に危険です、その中で最も怖くぜったいに口にしたくないのが豚のレバ刺しです。

 

もっと怖いかもしれないのがジビエ トリヒナを例として

さらに最近ではジビエ料理です。話題になるたびに怖くなります。肉そのものの問題だけではありません、肉を入れていた容器、調理に使用したまな板や包丁などを熱湯で消毒してるのか心配になります。さっと流すだけ、拭くだけでサラダ用の野菜などを切ったりしてないのか本当に心配してしまいます。

ジビエ料理と聞くといつも学生の時に研究室にあったスライド「筋トリクマ」を思い出します。最初何のことだかわからず、担当していた友人に「何これ」と確認すると、「これは筋肉トリヒナに感染したツキノワグマの筋肉の標本だよ」ということでした。 トリヒナは旋毛虫とも呼ばれます。

感染動物の生肉や生焼けの肉を食べると私達も感染します。筋肉内にいるのは被囊した幼虫で、言ってみればトリヒナの子どもが筋肉内で冬眠しているような状態です。これを我々が食べると冬眠から覚めて、腸のなかで成長し、繁殖を始め大量の幼虫が産まれ、その幼虫が体の中を移動し、体じゅうのあちらこちらの筋肉内でまた冬眠をします。主な症状は筋肉痛、発熱、顔のむくみ、下痢、発疹などです。死亡する例は多くはないのですが無ではありません。「筋トリヒト」という標本にはなりたくないものです。

ちなみに、トリヒナに感染した動物は弱ります。弱ると他の肉食獣にやられやすくなり、食べられてしまいます。食べた方の動物はまたトリヒナに感染し、弱ってしまいます。こうしてトリヒナは増え続けるのです。

 

アライグマで感染確認、拡大の恐れ

今、帰化動物のアライグマにも拡がり始めている事がすでに確認されており、今後さらに拡大し続ける事が容易に想像する事ができますので、我々は自身を守るためにジビエ料理に今まで以上に注意を払う必要がありますし、公衆衛生的な観点からも監視される必要があると考えます。

 

この寄生虫感染症は犬や猫も感染します

我々のもとに、どこかが痛くて元気のない犬猫が来院することはよくあります。色々なことを飼育者にお聞きし、あちこち身体チェックをしても、原因を特定出来ることつまり確定診断できることは多くはありません。初診時問診で「クマなどの肉を生や生焼けで食べましたか」と聞く事はまずありません。当院で、今までにこの疾患であった犬や猫が全くなかったとは言い切れません。

皆様には、犬や猫にどの様な肉を与える場合であってもしっかりと火を通してから与えて頂きたいものです。

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